鶴見線合作2021 ノベライズバージョン 第1巻
=第1章= 愛は備長炭
"tsuruMAD-synthesis.mid"
ベージュの背景と共に英字がぬるりと登場する。しかし、音は流れない。この合作をラベリングするのにもはや音は必要ない。音MAD界隈を巻き込む一大コンテンツと化した、鶴見線合作の幕開けだ。
「俺がMCガブリエル秀樹 でもブリブリキマッてる」
軽快な音楽とともに鶴見駅に侵入する205系。岩場のカップルは、ただそれを見つめる。この声色はそう、今や押しも押されぬ人気ラッパー、ガブリエル秀樹、その人だ。
「今ここで合法的に才能発揮 安善?違う 俺は安全地帯のまさに 青田さ 合作が、始まるぞ。 会場みんなPut your hands up!」
あのガブリエル秀樹のサプライズ出演により、鶴見線沿線のボルテージは最高潮。黄色い声が上がる。ある者は浅野駅で火花を散らしつドラムを一心不乱に叩く。またある者は浜川崎駅で丸めた片手を挙げ、レーザーの中をリズムに合わせ飛び跳ねる。
「合作が、始まるぞ。」
「会場みんなPut your hands up!」
どよめきが聞こえる。
「«ドア»が閉まります!」
"鶴見線合作 はじまるでごわす" の文字が変形を繰り返す。さあ、1年越しの鶴見線合作の幕開けだ。
=第2章= Montuno No.5
"提出催促されてるけどネタが思いつかないよ~~~~^!!
このままでは記念すべき2021回目の鶴見線合作に泥を塗ってしまう(泣き "
考えてるよ氏の声にならない叫びが動画内にこだまする。若干調子の外れた女声が彼の思いを代弁するかのように、ただ響いている。主催は鶴見線合作のクオリティを下げるようなパートには、決して容赦はしないのだ。粗い画質のなか、諦めようとする。心電図のように、女声も途切れ始める。このまま2021回も続いてきた鶴見線合作の誇り高き血はここで途絶えてしまうのだろうか…
"あ!"
ここで一閃が彼を襲う。
"そろそろ構成思いつきそう!"
彼は、一縷の望みをこの205系に見出した。テールライトが希望の光のようにまたたく。彼はそれを追いかけていく。その赤いランプの先に何があるのだろうか?追いかける。追いかける。一心不乱に追いかける。近づいたり遠のいたりする205系の鮮やかな黄色い車体が目に入るなか、そのうち彼は一つの答えを導き出した。
"今から作る"
彼はそれだけを言い残し、合作から去っていった。彼が鶴見線合作で活躍することは、もう、無いのである。
~完~
これは二次創作ということを明言しておきます。
私自身は鶴見線合作には全く関係がありません。